電子カルテの導入はまだまだ進んでおらず、病院向け電子カルテの普及率は3割に満たないとも言われています。普及しない要因はいくつかありますが、電子カルテの操作への不安という理由もそのひとつに挙げられるでしょう。代行入力業務は施設基準にも明記されている医師事務作業補助者の業務でもあり、その役割は今後さらに重要度が増していくと考えられます。
今後、電子カルテ導入を期に代行入力業務の開始を検討している病院もありますし、また、代行入力にすでに取り組んでいる病院でもまだまだ試行錯誤の段階であるという病院もあります。
そのため、現場見学を通して電子カルテの機能や運用を考える機会を設け、「代行入力をどのように進めるべきか」という意見交換を行う、会員研修会を企画いたしました。
今回研修コーディネータを務めた藤原理事より、以下に活動報告をさせていただきます。
なお、今回の見学会は当研究会として初めての試みでした。定員もあるため、今回に限ってはホームページでの告知を行わず、南関東地区にお勤めの会員に直接ご案内させて頂きました。今後、より多くの方にご参加頂けるよう検討して参りますので、よろしくお願いいたします。
理事長 矢口 智子
(金沢脳神経外科病院)
今回は、埼玉、千葉、東京、神奈川を中心に16名(会員11名、同伴者5名)の方からご参加いただきました。
初めに公立福生病院を見学させていただき、軽部医事課長より業務内容、医師事務作業補助者の外来配置によるメリットや人選、教育方法などを教えていただきました。
公立福生病院における医師事務作業補助者導入のメリットは、「①非常勤医師への対応をすることにより外来診察がスムーズに行われるようになった②パソコンに不慣れな医師への対応をすることにより外来診察がスムーズに行われるようになった③診察室内で検査等の案内を行うことにより外来診察がスムーズに行われるようになった」との理由で、外来の待ち時間の短縮が図られたとのことだそうです。また、配置したことで問題になったことと解決方法なども詳細に教えていただき、実務者の現状と課題を知ることによって今後の参考にすることができました。
次に、NEC西東京支社にて電子カルテ代行入力の操作デモを見せていただきました。様々な機能があることを学び、特に医師と医師事務作業補助者双方が「承認」という作業を徹底し安全に努めることを怠ってはいけないと再認識しました。
その後、医師事務作業補助者の代行入力に関する意見交換を行いました。瀬戸先生(東京医療保健大学・当研究会顧問)より代行入力に関わるデータをいくつか提示していただき、基本を抑えてから、ディスカッションが始まりました。すでに代行入力を行っている参加者が多く(電子カルテはNEC、富士通、SSI、東芝と様々)具体的な内容のディスカッションをすることができ ました。承認機能のことや、オーダー入力の範囲、カルテ記載時の電子カルテ画面と医師との関わりなど、とても興味深い内容で、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
ディスカッションで出た話題は、下記のとおりです。
◎承認はどこまで溜まってしまうのか?
→溜まっている医師には、医療情報部から「未承認が溜まっています」と通知。
◎どこまで代行するのか?
→医師によって異なる、診療科によって異なる。
→doは行うが、追加はしない「運用」にしている。
→抗がん剤はロックがかかっているので、入れられない。
→代行範囲を、リスクマネジャーなどが決めるのではなく、医師との相談で決めている。
◎予約業務をどうすべきか?
→予約は「医師の代行」でなく、医師事務作業補助者の権限でもいいのでは。
→しかし、予約センターに切り離したら「窓口業務」になってしまうのでは。
◎外来の医師事務作業補助者をどう配置すべきか?
→全ブースに配置したら代行入力以外の業務ができず、文書やNCDが進まない。
→文書の業務日を週に1日は作らないといけない。
研修会が終わったあとは懇親会を行いました。懇親会では、代行入力に限らず、広く話をすることが出来ました。医師事務作業補助者の業務の詳細な部分が明文化されていないために、「どうしよう・・・。」と思うことが多々あるようです。
しかし、辛い話のはずが、お酒の席だったので実務者同士で大変盛り上がりました。ご参加ありがとうございました。
研修コーディネータ 理事 藤原 典子
(東大宮総合病院)